ヴァーサス美容院

やることないから早寝したら、朝八時に目が覚める。二度寝する気分にもならなかったのでそのまま起きて、朝食を摂りながらＷＢＣを観戦。
起きた時点で５−０で勝ってた。よっぽどミスしない限り今日は勝てるだろうと思いながら見続け、勝利を見届ける。そのまま特ダネを見てから散髪へ。
月曜の午前中なんてめっちゃ空いているもので東京ウォーカーを読む暇も与えられず、散髪開始。
座ったところで、散髪時に毎回俺を悩ませてくれる質問が投げかけられる。
「本日はいかがなさいますか？」
「あーえーと……（めんどくさ……）」
このどんな髪型にするかという質問ってむずくありません？　どう答えれば良いんですかね。
テキトーになんて言って目も当てられないヘアースタイルにされたらたまったもんじゃないし……。かといってなんかカッコイイ俳優の名前を挙げて、その人みたいな髪型にして下さいっていうのは気が引ける。そんなことしたら、帰った後、「ぷ、あいつ顔が追っついてねーよゲラゲラ」ってな具合になること間違いなしだ。まあ、でも目の前じゃなきゃそんな陰口を言われてもわかりゃしないので別に言ってくれても構わない気もするが。
でまあ結局、「このまま短くしつつ、横をちょっとすいてください」と注文。
美容院のお兄さん爽やかスマイルで分かりましたとサムズアップ。
風呂敷みたいのかけられて散髪スタート。そういやこれもいつも思うんだけど、散髪されている間は視線はどこに向ければいいんですかね？　あと顔とか剃られている時もどこ向いていればいいんすかね？　目つむるのが正解？
そんな感じで考え込んでると不意に、「四月から新社会人？」と訊かれる。
「残念ながら」と答えてやろうと思ったけど、まあやめておく。てきとーに就職の話とかしながら髪を切られるのをぼーっと見つめていた。
で、なんか気付いたら頭洗われてました。お兄さんがーって洗ってくれるんですけど、それが痛てぇの。なんか手に堅い物がついてるんじゃねーの？ってくらい洗われていると痛てぇの。ほんと数秒に一回、ガっ！！てなるわけです。思わず、ぬるぽ！！！って逆に返してやろうかと思うくらい痛い。あれ、俺なんか悪い事したかなと疑問に思いながら痛みに耐える。
その後は髪をセットしてくれたんだけど、気付いたらなんかすげー古風なサラリーマンみたいな髪型にされていた。いや、これはないでしょって感じの。つーか、さっきの就職トークはこの為の伏線だったのかぁ！！　で、まあ鏡見るのも嫌なくらいダサイヘアースタイルなわけで、一刻も早く直したいのだが、お兄さんノリノリで凄く満足そうである。
そんな人に「これはねえよ」とは育ちが割とよい俺には言えない。
仕方ないので、金を払ってさっさと店を出て、外で直すことに。
支払いを済ませて店を出るとお兄さんがまた来て下さいねーと店外までお見送り。
ちょ……ついてこなくていいから！！　早く去れ！！
てきとーに愛想笑いをしながら、店が見えなくなるまで俺早歩き。まじで早歩き。不自然なくらい早歩き。
店が見えなくなったところで、全力で髪の毛をかき回してやった。